大判例

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福岡高等裁判所 平成4年(う)315号 判決

原判決は,判文上明らかなように「罪となるべき事実」に対する「証拠の標目」欄には,被告人の原審公判廷における供述を掲げるほか,原審公判調書中証拠等関係カード記載のとおり(検察官請求証拠目録記載と同一)であるからここにこれを引用する,とのみ記載している。

しかしながら,冒頭手続の行われた原審第1回公判調書によると,本件が簡易公判手続によって審判されたものでないことは明らかであるから,公判調書中の証拠の引用を認めている刑事訴訟規則218条の2は原判決書に適用する余地がなく,その証拠説明の方法としては,刑事訴訟法335条1項にいう「証拠の標目」を示してこれをなすべきである。そこで,原判決書のような記載が証拠の標目を示したものといえるかどうかを検討するに,簡易公判手続につき,特に規則で引用による方法を定めたということは,逆に解すれば,かかる規定の存しない通常手続においてはこれを認めない趣旨と解され,刑事訴訟法335条1項は,「証拠の標目」の挙示で足りるとしているが,未だ調書の引用を許すところまで簡略化しているものとは認められない。してみると,原判決書の「証拠の標目」欄記載のうち,公判調書中証拠等関係カードを引用するとしている部分は,刑事訴訟法335条1項にいう「証拠の標目」を示したものということができず,結局,原判決が認定した犯罪事実の証拠説明として適法に挙示されている証拠は,被告人の原審公判廷における供述だけということになり,原判決は,刑事訴訟法319条2項に違反し,特段の補強証拠を挙示,援用することなく,自白のみによって原判決記載の罪となるべき事実を認定した違法があり,右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反というべきであるから,この点において,破棄を免れない。

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